Technics パワーアンプ SE−A3 修理の様子
故障内容
プロテクションが解除しない。10Aのヒューズ断。
原因
Rチャンネルのパワートランジスタ(OD−503A)不良
処置
新型パワートランジスタ24個の交換と調整
修理期間
6/5〜6/10
パワーステージの改修作業
a)オリジナルのパワートランジスタ(OD−503−A)は、ピン配列が特殊な為、基板の一部変更が必要
パワーブロック基板のパターン変更とジャンパー
実施
現行のトランジスターが実装できる様に基板の改修
作業実施。
b)ヒートシンクを加工して、新型のパワートランジスタを取り付ける
最新のパワートランジスター(230V15A PC180W)
に交換。
ヒートシンクの加工が面倒でした。
OD−503−Aのピッチに合わせて実装。
c)取り外したオリジナルパワートランジスタ(OD−503−A)
2個が、ショートして不良。他2個は、hfeの異常低下で
いずれも使用不可。
OD−503−Aはとっくに生産中止。A3専用の素子で
あった。
SE−A3で電源ヒューズ(10A)断の場合は、大半がこの
パワーTRショートが原因です。部品が生産中止なのと
ピンの配列が特殊なので、大半は修理を諦めて廃棄されて
いるのが現状でしょう。
SE−A3は、広帯域アンプの為に組み合わせるプリアンプ
によっては、超広域発振してこのTRがショートする事故が
多いのです。
*入力回路にも問題あることが判りましたが。。。
d)ドライバー基板の修理。ヒューズ抵抗の交換とドライバーTR交換。
ドライバーTRは、東芝製へ交換。(断然音がよいのです。)
e)電圧増幅段は、はんだすべて修正。入力回路の一部変更実施。
電圧増幅段は、ロットにより少々回路変更されています。
こちらは、最終バージョンです。
入力回路は、超高域発振対策の為、一部変更済み。
f)ヒートシンク取り付け、電源ラインのはんだ付け。
電源バスラインのはんだは、はんだ吸い取り機能付きコテ
使用し、パターンを剥がさない様、慎重に取り外し。取り付け
時は、40Wのコテで素早く実施。
g)ミューティング&SPセレクトリレー交換(3ヶ)
これは、交換したリレー。定番の項目です。背面を叩くと
歪率計がガクッと動き盛大な歪が出る状態でした。
リレー交換前の歪波形。接点特有の歪が出ています。
0.001%まで測定可能なレンジ、歪率0.006%
(20kHz 8Ω10W ダミー抵抗負荷)。
かなりシビヤな測定です。
h)アイドリング調整とオフセット調整。
左右のアイドリング調整中。微調整は、歪波形見ながら
再調整する。
*シンクロバイアス回路は、電流が多くても、少なくても
歪が多くなる。
バイアスの浅い状態。スイッチング歪とクロスオーバー歪
発生している。
バイアス電流(アイドリングとクランプ)調整後の波形。
ほとんど歪は見られません。
i)息を吹き返したSE-A3
強力電源回路と、最新のパワーTRコンビはすごいです。
すばらしい音質になりました。
修理完了です。